労務費の内訳見積

標準労務費とは?国の「労務費に関する基準」の中身と見積りへの使い方

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建設業の見積りの話で「標準労務費」という言葉をよく見かけます。国土交通省の資料での正式な名前は「労務費に関する基準」です。中央建設業審議会が作成し、その実施を勧告したもので、技能者に経験・技能に応じた適正な賃金が支払われるよう、発注者から技能者を雇う建設業者までのすべての取引段階で、適正な労務費(賃金の原資)を確保することを目指しています。この記事では、基準の中身と、自社の見積書に使うときの考え方を整理します。

「労務費に関する基準」ができるまで

令和6年法律第49号(建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律)によって、中央建設業審議会は、建設工事の労務費に関する基準を作成し、その実施を勧告できることになりました。国土交通省の政策ページでは、その後の流れが次のように説明されています。

  • 令和6年9月:中央建設業審議会に、労務費の基準に関するワーキンググループを設置
  • 令和7年10月:第11回ワーキンググループで、労務費に関する基準案をとりまとめ
  • 令和7年12月2日:中央建設業審議会で「労務費に関する基準」が作成され、その実施が勧告

基準は、公共工事・民間工事を問わず、契約の当事者どうしが価格交渉のときに参照できる「当該建設工事を施工するために通常必要と認められる労務費」の相場観として働くこと、あわせて行政が指導・監督を行うときの参考指標としても使えることを狙って作られています。

労務費は「労務単価×歩掛×施工量」で考える

基準では、個々の請負契約で確保すべき適正な労務費を、「適切な職種の公共工事設計労務単価×施工条件・作業内容等に照らして適正な歩掛」で出した「単位施工量当たりの労務費」に、「施工量」を掛けた額に相当するものとしています。

個別の契約に当てはめるときの留意点として、概要資料には次のことが書かれています。

  • 労務単価は、工事の施工場所が属する都道府県に適用される公共工事設計労務単価を使う
  • 歩掛は、その工事の施工条件・作業内容等に照らして、受注者として責任を持って施工できる水準を計算して設定する
  • 高い技能を持つ技能者が必要な場合や、技能者の確保にかかるコストが高い場合などは、受注者が労務単価を割り増して見積もり、双方が誠実に価格交渉を行う
  • 公共工事設計労務単価には技能者の賃金相当分以外の経費は含まれず、必要な額は請負契約の中で別に計上する

計算の例(数値はすべて説明用の仮のものです)

ある作業の労務単価を 1人1日 30,000円、歩掛を 0.1人日/㎡ とすると、単位施工量当たりの労務費は 30,000円 × 0.1 = 3,000円/㎡ です。

施工量が 500㎡ なら、労務費は 3,000円/㎡ × 500㎡ = 1,500,000円 になります。

実際の見積りでは、施工場所の都道府県の公共工事設計労務単価と、自社の施工能力に合った歩掛を使って計算します。

言葉の違いを整理する

似た言葉が多いので、基準の資料に出てくる言葉の関係を表にまとめます。

言葉中身見積書での使いどころ
労務費に関する基準中央建設業審議会が作成・勧告した、適正な労務費の考え方を示す基準労務費をどう計算し、どう確保するかの拠り所
労務費の基準値国土交通省が職種分野別に、トンあたり・平米あたり等の「単位施工量当たり労務費」として公表する具体値自社の単位施工量当たりの労務費と比べる目安
公共工事設計労務単価基準で労務単価として使うこととされている単価施工場所の都道府県の単価を労務単価に使う
歩掛単位施工量当たりに必要な人日などの手間作業内容・現場条件と自社の施工能力から設定する
施工量その工事で施工する数量単位施工量当たりの労務費に掛けて労務費を出す

職種分野別の「労務費の基準値」

価格交渉で適正な労務費の確保を進めやすくするため、国土交通省は職種分野別に、基準を踏まえた具体値を「基準値」として公表しています。基準値は、専門工事業団体・元請建設業団体・国土交通省から成る「職種別意見交換会」等を経て決められます。

基準値の概要資料では、東京都の例として次の値が示されています。

  • 鉄筋工事(建築):71,472円/t(RCラーメン構造、階高3.5~4.0m程度、形状単純等の条件)
  • 型枠工事(建築):5,291円/㎡(普通合板型枠、ラーメン構造・地上軸部、階高3.5~4.0m程度等の条件)

令和7年12月までに、13職種分野99工種(作業)で基準値が公表されました。その後も、ポータルサイトで基準値の追加・更新が案内されています。最新の値は、都道府県や職種分野から探せる「労務費に関する基準ポータルサイト」で確かめてください。

注意したいのは、基準値が標準的な作業内容・施工条件等を前提とした値だという点です。個別の請負契約にそのまま当てはめるものではなく、特殊な気象条件や現場の制約などがある場合は、具体の作業内容や施工条件等を踏まえて補正して労務費を出す必要があるとされています。また、基準値の定めのない職種分野でも、基準の考え方に沿った適正な労務費を確保する必要性は変わらないとされています。

自社の見積書に使うときの手順

  1. 作業を分ける:見積もる工事を、職種や作業ごとに分けます。
  2. 労務単価を決める:施工場所の都道府県に適用される公共工事設計労務単価を確かめ、必要な技能や確保のコストに応じて割り増すかどうかを検討します。
  3. 歩掛を決める:基準値の前提条件と現場の条件を比べ、自社の施工実績から、責任を持って施工できる歩掛を設定します。
  4. 労務費を計算する:労務単価×歩掛で単位施工量当たりの労務費を出し、施工量を掛けます。
  5. 基準値と見比べる:基準値がある職種分野なら、自社の単位施工量当たりの労務費と並べ、差がある理由(現場条件など)を備考に書いておきます。
  6. 労務費以外の経費を別に積む:法定福利費(事業主負担分)・建退共掛金・安全衛生経費など、労務単価に含まれない経費を別に計上します。

基準は相場観と考え方を示すもので、個々の見積金額が適正かどうかを決めるものではありません。個別の取引で判断に迷うときは、専門家や許可行政庁に相談してください。

よくある質問

「標準労務費」の正式な名前は何ですか?

国土交通省の資料での名前は「労務費に関する基準」です。中央建設業審議会が作成し、その実施を勧告したものです。

労務費に関する基準は、いつ作成されましたか?

令和7年12月2日に開催された中央建設業審議会で作成され、その実施が勧告されました。

基準では、労務費をどう計算する考え方ですか?

適切な職種の公共工事設計労務単価に、施工条件・作業内容等に照らして適正な歩掛を掛けて「単位施工量当たりの労務費」を出し、それに施工量を掛ける考え方です。

労務費の基準値は、そのまま見積りに使えますか?

基準値は標準的な作業内容・施工条件等を前提とした値で、個別の請負契約にそのまま当てはめるものではありません。特殊な気象条件や現場の制約などがある場合は、補正して労務費を出す必要があるとされています。

基準値のない職種でも、適正な労務費を考える必要はありますか?

あります。基準値の定めのない職種分野でも、基準の考え方に沿った適正な労務費を確保する必要性は変わらないとされています。

出典

出典の確認日:2026年10月13日

この記事は、国土交通省の公表資料をもとにした一般的な情報です。個別の見積りや契約が法令に照らしてどうかの判断は含みません。制度や基準値は改定されることがあるため、最新の内容は国土交通省の資料でご確認ください。

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